モータケースの3次元スキャン作業 - KBKエンジニアリング

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モータケースの3次元スキャン作業

数十年使用され続け整備後の試運転時に振動が高くなり緊急停止すると連絡が入りました。組立は工場内で行われており、分解や組立の際に細かい寸法の計測などは行われていないため、締め代異常やモーターの入力側と出力側の芯ずれなどが原因ではないかとあらかじめ予想し対応にあたりました。

3次元スキャンによる現状の把握

客先よりモーターの引き取りを行い3次元スキャンの準備を行います。スキャンが必要となる部品は上部、下部ブラケットとモーターケースの3部品となり、それぞれの部品の洗浄や脱脂を行い3次元スキャンの準備を進めます。今回のモーターケースは形状が円筒のため横向きから縦向きへの天地作業を行いクレーンを用いてスキャンが最適に行える高さまで吊り上げを行います。

仕事も段取りが8割と言われますが、3次元スキャンも同様に入念な準備が必要となります。一旦スキャンを開始すると後戻りすることができず、精度の高いデータは最初の準備にかかっています。今回のモーターケースは外径とインロー部の相関関係、上部、下部のブラケットを組込んだ状態での芯ずれの調査を行いました。

様々なターゲットを貼付け3次元スキャンの準備します。どこにどのターゲットを貼るかがノウハウとなります

生成されたデータと機械工学の知見を活かした解析

今回のモータの部品を全てスキャンするにはおおよそ1日は必要となります。今回の上部、下部ブラケットのスキャンは難しくはありませんでしたが、モーターケースは筒状の形状のため、円筒部分や下面のスキャンはそれほど難しくはありませんでしたが、吊り上げの際に必要となる治具があるため、この治具に3次元スキャン時のレーザー光線が当たらないように注意しながらスキャンを行います。

KBKエンジニアリングはモーターの整備を得意としている会社ではありませんが、長年の回転機械の経験から、モーター内部のコアとステーターの隙間が均一ではないことや、上部と下部のブラケットの芯ずれが稼働中の微振動などで発生することが振動の原因ではないかと当たりを付けながら測定データの解析を実施しました。

解析を行う際もデータを編集するだけではなく、解析ヵ所が運転時モーターに与える影響を考慮しながら解析を行うと同時に組立時の調整や使用されている材料が持つ特性など幅広い機械工学の知見と組合せながら検討を行っています。

赤は平均径より大きく、青は平均径より小さい状態です。この画像から楕円傾向である事は明らかです

リバースエンジニアリングを想定したデーター解析

本件特注モーターはメーカの事業撤退によりメーカーからの部品供給は不可能な状態です。そのため今回スキャンを行ったデータと現物の状態の2つの情報を基に再製作が行えるかどうかの検討を行いました。モーターケース上部下部に位置するブラケットとモーターケース自身の嵌め合いはガタガタの状態である事が確認でき、長年の使用によるもモーターケース自身の歪みに加え、上部下部のインロー部の緩い締め代と合わされ試運転中の振動の増大を生み出しているのではないかと思われます。

この場合材料が鈍らな状態である事が想像できますが、当時の製鉄の技術力や加工精度では厳しい公差を満たす事が難しかったのではないかと思われます。今回測定したデータにより数多くの改良点を機械工学技術者の視点を通して発見できました。このモーターケースは測定データの解析結果の提出を行い再製作の注文を受けています。なぜ振動が出るか、なぜ嵌め合いが緩くなってしまったのか、それらをどうすれば解決できるか、これらの改善点を考慮しながら次回、本件のリバースエンジニアリングにより再製作されたモーターケースをご紹介します。

任意断面を切断し内部の状況を確認できます
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