リアルタイム温度測定を用いた組立作業 - KBKエンジニアリング

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リアルタイム温度測定を用いた組立作業

2011年9月ドイツハノーファー・メッセで当時のドイツ首相メルケル氏とシーメンス副社長により発表されたコンセプトであるIndustory 4.0、当時のドイツでは国外の人件費高騰により本国への製造業の回帰に加え自動車産業の生産性の改革を狙い発表されました。このタイミングで偶然ですが2013年頃よりセンサーなどのディバイスの価格が急激に下がり始めたことにより製造業へセンサーを用いたリアルタイムデータの取得が一気に広がりました。この変化の延長線上にIoTやDXなどが続いています。

今回は熱電対を用いた焼き嵌め+冷やし嵌めを温度のリアルタイムモニタリングを行いながら実施した内容を紹介します。

恒温槽内の温度のリアルタイムモニタリング

ある会社のある製品の組立を行うにあたり外部から急激な熱の上昇をすることなく焼き嵌めと冷やし嵌めを行いたいとの依頼が弊社へ入りました。この要望に応えるため恒温槽のレンタルを行います。今回レンタルした恒温槽はエスペック社の製品でプログラムを行い所定の温度で保持するようにします。一旦プログラムを行い製品を恒温槽内に入れて熱電対と実体温度計との温度差を測定し恒温槽の設定温度を適切な狙い値になるように調整を行います。

これらの初期設定を行い組立前日よりプログラムを走らせ所定の温度で夜間運転を実施しました。

恒温槽はかなりの大きさがあります。この恒温槽を用いて焼き嵌めでは調整が難しい温度の調整を行います

インターネット回線を利用した夜間自動運転

客先立会による組立を朝一番から行いたいとの要望があり夜間運転にて製品の温度を上げておく処置を行います。ここで注意しなければならない点が、ある温度を超えてしまうと内容物の分解が始まるため閾値の温度設定を恒温槽へ行う必要があります。この閾値に対して昇温中にオーバーシュートが発生しアラームにより恒温槽が停止してしまうことがありました。

このため恒温槽内の温度を常時モニタリングを行いインターネットを通じて現在の温度をリアルタイムに監視を行います。今回はモニタリングのみを行いますが、恒温槽からのアラーム信号と熱電対からの温度とを組合わせ自動復旧プログラムの作成も可能でした。しかし、今回は単発の依頼のため人間による温度の監視で対応することとし、夜中に適宜インターネット経由で温度の監視を行いました。

3chの熱電対の測定結果をリアルタイムに監視します。サンプリングレートは1回/1秒で設定しています

焼き嵌め+冷やし嵌めの極意

翌朝問題なく恒温槽が稼働しており、内部の製品も設定温度近傍で推移していることを実体温度計で確認します。ここでKBKエンジニアリングの本業である焼き嵌め+冷やし嵌め作業を行います。締め代の確認を行いながら挿入物を適切な大きさへと収縮させ、内径部はこれとは逆に拡大状態とし作業を行いました。軸を挿入後の製品の温度変化を熱電対で測定し、どのような熱の偏移があるかを参考値としてデータ収集を行いました。

冷却され真っ白になっています。これにより内径との隙間が確保でき余裕を持った作業が行えます

今回は熱電対を使用しリアルタイムモニタリングを行いながら組立を実施しました。様々な制御機器とインターネットを融合した知見も数多く所有しており、今回偶然にもこれらの知見が組立に活かされました。

精度の度合いにもよりますが秒単位、または1/1000秒単位のデーターを監視しながらの組立も挑戦的な仕事になります。機械整備だけではない新分野の知見を融合した機械整備を日々行っています。

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