真空ポンプのリバースエンジニアリング - KBKエンジニアリング

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真空ポンプのリバースエンジニアリング

製鉄所構内で使用されている真空ポンプのサイドカバーが破損してしまいリバースエンジニアリングの技術を用いて復元を実施しました。

機械要素を考慮したスケッチ

羽根とケーシングの隙間を最小限にしながら真空を作り出す真空ポンプは厳しい機械要素の積み上げにより製作されています。今回リバースエンジニアリングで復元した大阪真空機器製の真空ポンプもこれまでの真空ポンプと同様に厳しい機械要素の積み上げが見られます。ベアリングを回転中心とする適切な軸の嵌め合い公差、回転体との同芯を確保しなければならない軸受、これら多くの大事な部分の関係性を考えながらスケッチを行います。

ケーシングは鋳物でてきており客先で落下させてしまい冷却ラインに損傷が見られます

スケッチからCAD図面への展開

物を確認しながらのスケッチは技術者の実力が試される大事な作業です。このスケッチにより収集された結果をCADへと展開します。CADはスケッチで得た情報を元に描かれるため、ある意味作図の要素が強い作業になります。スケッチの際にいかに必要となる情報を製品から拾うか、締め代はどの程度が適切か、ベアリングはどの種類を使用するか、加工の手順はどうかなど製作する際の状況を想像しながらスケッチを行いCADへと展開します。

CADで製作された3Dモデルと図面は検図を行い加工業者へと流します。今回は強度と締め代が重要な部分は既設品を忠実に再現しています。一方で加工が困難となる部分はサイドカバーに厚みを持たせることで強度と加工性の改善を行っています。

学生時代にはCATIAとAUTO CAD、働き出してからはProEと数多くのCADソフトを使用してきました。現在はSolidworksを使用しています。高価なCADから安価なCADまで業務の目的に合ったCADソフトを使用するようにしています。

左が再製作品、右が既設品です

組込みから出荷へ

再製作を行った部品が入荷され分解された真空ポンプの洗浄と軸のリップ摩耗の補修を行い組立を行います。今回は2台目の依頼のため問題なく組立を行います。新規製作したサイドカバーにベアリングとOリングを組込み軸端の振れの確認を行いながら適切な位置を決定します。この調整は軸端の振れが数値として表される一方、回転時の抵抗を可能な限り均一化する必要があります。トルクメーターを使用する場合もありますが、微量の場合には測定が難しいため経験と勘に頼る場合もあります。

塗装前の最終確認を行います。冷却ラインはエルボーにより適切な方向へと変換しています

リバースエンジニアリングにより復元したサイドカバーを組込み既設品以上の耐久性と頑丈さを備えた真空ポンプへと改良したことにより客先では冷却ラインの損傷により廃棄を考えていた製品の延命を行えライン全体の改良が不要になり余計な費用を抑えられたと感謝の連絡を頂いています。

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