Maag Witte GmbH製 樹脂用ギアポンプ整備
高温高圧下で使用されるギアポンプは加工な環境で使用されるためラビリンスの摩耗やハウジング内径への傷が多くみられる製品です。今回はリバースエンジニアリングの知見を用い樹脂会社より依頼されたギアポンプの整備を行います。
固着した樹脂との闘い
ギアポンプは溶解した樹脂を定量的に送り出す機能があります。溶解した樹脂はポンプ自身が昇温されその粘度を維持しますが、整備のために取り外されるとポンプ自体が冷えてしまい中の樹脂が内部で固着します。今回のギアポンプもこれまで整備を行ってきたギアポンプと同様に内部で樹脂が固着していたため分解に苦慮しました。

洗浄後の検査
どうにか固着した樹脂を取り去りポンプを部品単位に分解します。樹脂の固着はかなり激しいため適切な洗浄方法を用い部品の細部まで清掃を行います。今回のギアポンプはシールにラビリンスを使用しており、樹脂が機内外への流出を食い止めていました。無給ブッシュ部やケーシング内径など安定した稼働と性能に直結する部分の寸法測定を行います。洗浄にかかる労力は通常整備する機械の3~4倍になるため樹脂系の固着物の整備では洗浄作業が大変な作業の一つになります。

費用対効果を考えた補修
補修の種類にも様々な段階が存在します。永続的に使用し続けていきたい機械、次のメンテナンスまで稼働すれば十分と思われている機械など多種多様なレベルの補修内容があります。今回のギアポンプは既存の状態を維持しつつ必要最低限の補修をして欲しいとの依頼から、必要最低限かつ機械を良い状態に維持できるレベルの補修を実施しました。各部品の必要カ所に対してPT検査を施工し問題なき事を確認しています。

組立から調整作業
取り外した部品をそれぞれ元の位置へ戻していきます。交換部品に関しては支給されており、これらの部品の検品を行ったところ不足部品や不要な部品が確認されました。今回整備に入ったポンプは1990年代に製作されたもので、支給された作業要領書や組図とは異なる物でした。このためリバースエンジニアリングの経験を利用し必要となる嵌め合い公差やパッキンなどの調査を行い仕様に足りるものを国内市場から選定、組付けを実施しています。

今回のポンプは10年前に整備を行った担当者、方法、部品などがない状態から異なる要領書を用いて整備を実施しました。英語の要領書ではありましたが中身の完全読破とリバースエンジニアリングの知見を部品へと応用し組立を実施しています。
この様に図面がない、当時の担当者が退職した、要領書が当該ポンプと異なるなど様々な”ない”状態からでもリバースエンジニアリングの経験を用い機械の整備を可能とする知見を有しています。