VXミルセパレーターのローター再製作 - KBKエンジニアリング

ブログ

VXミルセパレーターのローター再製作

粉々に粉砕を行うVXミルセパレーターはヤシガラや石炭を粉砕し機械内部上空で回転するローターが作り出す負圧により空気の力で粉砕された微粉末を次工程へ搬送する機械です。このVXミルセパレーターの中でも上空で回転するローターは粉砕された微粉末が常時羽に衝突することにより極度に偏摩耗が起こり、この偏摩耗がアンバランスの原因となり振動が発生することで安定した運転を達成できない問題が多く報告されています。今回は極度に偏摩耗が発生し効率が低下していたVXミルのローター部の再製作を依頼され対応を行いました。

部品単位のスケッチ

製品の再製作に関して今回は組立図の提供が客先からあり、最外径の寸法は組立図を利用し、その他の寸法は製品からのスケッチにより寸法と形状を決定しました。ローターは当然の如く製缶で作られており寸法公差はそれ程厳しくはありませんが、重要となる軸と穴の嵌め合い公差、最外径部の公差に関して指定を行い、幾何公差に関しても必要となる部分については指示を行います。

今回再製作を行ったローターは活性炭の微粉末により極度の摩耗を受けており、この摩耗により偏摩耗を起こしておりローターの振動値が増大していました。このため摩耗を起こしにくい材料の選定が必要となります。

組図、スケッチを行い各種寸法を決定し図面へと展開していきます

材料選定

通常の材料選定は炭素鋼やステンレスなどから選択することになります。図面に材料が指定されている場合は材料の選定はとても容易ですが、もし図面に材料の指定がない場合には様々な分析方法を用いて材料をおおよそ特定することも可能です。

今回は組図しかなく、また日々の運転によりローターの羽部分は活性炭の微粉末により極度の摩耗にさらされており耐摩耗性の高い材料での製作が必要となりました。ローターは製缶のため溶接性を考慮しながら摩耗性の高い材料と機械加工が可能な材料の選定を行います。

今回は既設のローターに使用されていた材料の2倍以上耐摩耗性が高い材料を選択し製作を行いました。

作成した全部品を組合わせて最終的な状態の確認を行います

機械加工

部品単位のスケッチと材料選定を行い最後に機械加工を行います。ローターの羽は製缶にて1周均等な角度で固定を行い、最外径部分に硬化肉盛りを行いなるべく摩耗の進展が起こらないように改善を行いました。機械加工時に重要となる同芯度や真円度など高速に回転する機械部品の加工時には必ず注意しなければならない幾何公差の指定も重要となります。

今回のローターは製缶の工程があるため、溶接による歪みや製缶ゆえの10分台の公差のずれがあるため機械加工により所定の精度内に収める必要があります。加工を行う上でどの部分を基準とするか、どの部分が重要になるかを加工業者と打ち合わせを行い確かな加工が行えるように入念な準備が必要となりました。

最外径は研磨により所定寸法内まで加工を行いました

今回のVXミルのローターは粉々になった炭の搬送に使用されており、ローターの羽の部分は顕著に摩耗し、この偏摩耗が原因となりローターの加速と減速時に一致する共振点で振動の増大が発生していました。新しく製作したローターは加速、減速時の異常振動もなくケースと羽のクリアランスが適切に確保された結果、吐出量の増加や消費電力の低下などにより高効率かつ安定操業が可能となりました。

羽同士の間隔が適切に確保され硬化肉盛り層を含んだきれいな製品が完成しました

KBKエンジニアリングでは製缶工程を含んだ製品でも製作が可能です。図面がない製品や組図はあるが各部分の寸法が不明な製品、また図面も組図もないが再製作しなければならな製品にも工学的知見を組合わせた方法で再製作を可能としています。

«
»